こんにちは、DXデザイナー・くみちょうです。
今回からスタートする DXコンサル事業のコラム連載 では、企業の現場に寄り添いながら「プロジェクトを成功に導く実践的なヒント」をお届けしていきます。
多くの企業でプロジェクトマネジメントを支援してきた経験から私が強く感じるのは、「プロジェクトの成功率はPMO(プロジェクト・マネジメント・オフィス)の強さに比例する」 という事実です。
初回のテーマは、その核心ともいえる「強いPMOの作り方」。
形骸化した“名ばかりPMO”ではなく、組織全体のプロジェクト成功率を底上げする「強いPMO」とは何か? その具体的なステップを解説していきます。
執筆:DXデザイナー 𠮷田久美絵(通称:よしこ課長)
事務系業務の改善(BPR)やアウトソーシング(BPO)を中心に活動し、現場目線での課題解決を得意とする。社会人15年目。
そもそも、なぜ「強いPMO」が重要なのでしょうか?
ビジネス環境の変化が激しい現代において、企業は常に新しい価値を生み出し続けるために、複数のプロジェクトを同時に、かつスピーディーに進めることが求められています。
しかし、それぞれのプロジェクトがバラバラのやり方で進んでいては、以下のような問題が起こりがちです。
隣のプロジェクトが何をやっているのか、順調なのか誰も知らない。
特定のエース人材にタスクが集中し、他のプロジェクトが停滞する。
過去の成功や失敗が共有されず、同じ過ちを繰り返してしまう。
会社全体としてどのプロジェクトが重要で、どこに投資すべきかが見えない。
こうしたカオスな状況を整理し、全社のプロジェクトを俯瞰して、成功へと導く羅針盤の役割を果たすのが「強いPMO」なのです。
PMO(Project Management Office/プロジェクト・マネジメント・オフィス)とは、企業や組織におけるプロジェクトマネジメントを横断的に支援・統制する専門組織を指します。
単なる「進捗確認係」や「事務局」ではなく、プロジェクトの成功率を高めるために必要な仕組みやルールを整備し、全社的な最適化を実現する役割を担います。
標準化の推進
プロジェクトの進め方を統一し、WBSや進捗管理表、リスク管理シートなどを共通化することで、プロジェクト品質のばらつきを防ぎます。
情報の可視化と共有
各プロジェクトの進捗や課題を見える化し、経営層や関係部門が適切に意思決定できるようにします。
リソースの最適配分
人材や予算が特定プロジェクトに偏らないように調整し、組織全体としての効率性を高めます。
ノウハウの蓄積と展開
成功事例や失敗からの学びをデータベース化し、次のプロジェクトに活かすことで、属人化を防ぎます。
現代の企業は、新規事業、DX推進、システム刷新など、同時並行で数多くのプロジェクトを抱えています。
もしPMOが存在しなければ、プロジェクトごとに進め方がバラバラになり、リソースの奪い合い・進捗の不透明化・ノウハウの分散といった問題が頻発します。
その混乱を整理し、全社のプロジェクトを成功に導く羅針盤となるのがPMOなのです。
では、いよいよ本題です。
全社のプロジェクト成功率を底上げする「強いPMO」は、どうすれば作れるのでしょうか?
私は、大きく分けて3つのステップが重要だと考えています。
最も重要で、最初に取り組むべきステップです。
これが曖昧なままでは、PMOはただの「雑用係」や「進捗確認係」で終わってしまいます。
まずは、自社にとってPMOがどんな役割を担うべきかを定義します。
PMOのタイプは、大きく分けて以下の3つがあります。
自社の組織文化やプロジェクトの特性に合わせて、
といった形で、目指す姿を具体的にしましょう。
定義したミッションを遂行するために必要な権限を、必ず経営層から正式に委譲してもらいます。
この「経営層のお墨付き」があるかどうかで、現場の協力度が全く変わってきます。
PMOは単なる一部署ではなく、経営と現場をつなぐ重要な組織であることを全社に示しましょう。
PMOは「誰がやるか」で成果が大きく変わります。では、どんな人材がPMOに向いているのでしょうか?
もちろん、プロジェクトマネジメントの知識や経験(PMP®資格など)は重要です。
しかし、それ以上に私が大切だと考えているのは、以下の3つのスキルです。
最初は少人数でも構いません。
社内で人望が厚く、これらのスキルを持った人材を抜擢することから始めましょう。
もちろん、外部から専門家を招くのも有効な手段です。
特定の個人の頑張りだけに頼っていては、組織は強くなりません。
PMOが中心となって、プロジェクトマネジメントを「仕組み化」していくことが重要です。
など、プロジェクト運営に必要なドキュメント類を標準化し、誰でも使えるように整備します。
これにより、プロジェクトの品質が安定し、成功ノウハウが組織に蓄積されやすくなります。
全社のプロジェクト情報を一元管理し、可視化するためのツールを導入します。
Asana、Jira、Backlogなど、様々なツールがありますが、大切なのは「みんなが無理なく使えること」です。
高機能でも複雑すぎると形骸化してしまいます。
ツールの導入と合わせて、使い方に関する勉強会を開いたり、PMOが積極的に活用をサポートしたりすることで、定着を促しましょう。
今回は、「強いPMOの作り方」をテーマに、3つのステップをご紹介しました。
強いPMOを構築し、機能させることは、決して簡単なことではありません。
時には現場からの抵抗もあるでしょうし、すぐに成果が出ないこともあるかもしれません。
しかし、この取り組みを粘り強く続けることで、PMOは間違いなく組織の「心臓部」となり、全社のプロジェクトに質の高い血液(=標準化されたプロセス、ノウハウ、適切なリソース)を送り込み、プロジェクト成功という大きな果実をもたらしてくれます。
この記事が、あなたの会社のPMOを「強く」するための一歩を踏み出すきっかけになれば、とても嬉しいです。