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ノーコードツールが増えすぎて管理できない?現場DXに必要なガバナンス設計を解説

作成者: Admin|May 27, 2026 1:00:00 AM

DX推進という言葉は、いまや多くの企業で当たり前のように使われるようになりました。

ノーコードツールやローコードツールの普及により、これまでシステム部門に依頼しなければ実現できなかった業務改善を、現場部門が自ら進められるようになりました。

たとえば、申請フローのデジタル化、Excel作業の自動化、簡易的な業務アプリの作成、データ集計の効率化など、ノーコードツールは現場DXを前に進める大きな力になります。

一方で、便利だからこそ起きやすいのが、ツールやアプリの“乱立”です。

誰が作ったのか分からない
どのデータを使っているのか分からない
退職・異動後にメンテナンスできない
同じようなアプリが複数存在している
セキュリティや権限管理が曖昧になっている

このような状態が続くと、せっかくのノーコード活用が、業務効率化ではなく新たな管理負荷を生む原因になってしまいます。

そこで重要になるのが、ノーコード活用における“ガバナンス設計”です。

本記事では、ノーコードツールが乱立する背景や企業が抱えやすいリスクを整理しながら、現場DXを止めずに安全に活用するためのガバナンス設計のポイントを解説します。

執筆:檜田詩菜(ひわだしいな)

BtoB領域を中心に、SEO記事・ホワイトペーパー・メールマーケティングなどのコンテンツ企画制作に従事。見込み顧客との接点づくりからナーチャリング設計まで、コンテンツを軸としたマーケ支援を行っている。

 ノーコードツールが企業で広がっている背景 

近年、ノーコードツールは、情シスや開発部門だけでなく、営業、総務、人事、経理、マーケティングなどの現場部門にも広がっています。

その背景には、業務改善のスピードがこれまで以上に求められていることがあります。
日々の申請業務、データ入力、進捗管理、集計作業など、現場には

「少し手間がかかる」
「毎回同じ作業をしている」
「Excelやメールでの管理に限界がある」といった小さな課題が数多く存在します。

従来であれば、こうした改善にはシステム部門への依頼や外部開発が必要でした。

しかし、ノーコードツールを活用すれば、専門的なプログラミング知識がなくても、業務アプリの作成やワークフローの自動化、情報管理の仕組みづくりを現場主導で進めやすくなります。

現場部門でも業務改善を進めやすくなった

ノーコードツールの最大のメリットは、専門的なプログラミング知識がなくても、業務アプリや自動化フローを作成できる点です。

これにより、現場担当者が日々感じている

「この作業をもっと簡単にしたい」
「この確認作業を自動化したい」
といった小さな改善ニーズを、スピーディーに形にしやすくなりました。

情シスだけではすべての改善要望に対応しきれない

企業のDX推進では、情シスやDX推進部門に多くの相談が集まりがちです。

しかし、システム改修、セキュリティ対応、基幹システム運用、問い合わせ対応などを抱える中で、現場の細かな業務改善要望まですべて対応するのは簡単ではありません。

その結果、現場部門が自分たちで改善できるノーコードツールへの期待が高まっています。

ノーコード乱立によって起きる5つの問題

ノーコードツールは、現場の業務改善をスピーディーに進められる便利な手段です。

しかし、利用ルールや管理体制がないまま広がると、社内のあちこちでアプリや自動化フローが作られ、全体像が見えにくくなってしまいます。

ここでは、ノーコードツールが乱立することで起きやすい5つの問題を整理します。

1. 誰が何を作ったのか分からなくなる

ノーコードツールは簡単に作れる分、管理台帳や申請ルールがないまま使われ始めることがあります。

その結果、社内にどのようなアプリや自動化フローが存在しているのか、情シスや管理部門が把握できない状態になりがちです。

2. データの持ち方がバラバラになる

部門ごとにノーコードツールを使い始めると、顧客情報、案件情報、売上情報、社員情報などが複数の場所に分散することがあります。

同じ顧客情報なのに、営業部門と管理部門で別々に管理している。
同じ数値を見ているはずなのに、ツールごとに集計結果が違う。

3. 属人化してメンテナンスできなくなる

ノーコードツールは、作った本人にとっては分かりやすくても、他の人が見たときに構造が分かりにくい場合があります。

特に、命名ルールや設計ルールがないまま作られたアプリや自動化フローは、担当者の異動・退職後にブラックボックス化しやすくなります。

4. セキュリティ・権限管理が曖昧になる

ノーコードツールでは、外部共有、ファイル連携、API連携、フォーム入力、データベース連携などが簡単に行えるものもあります。

しかし、便利な反面、権限設定を誤ると、本来見せるべきではない情報が閲覧できてしまうリスクもあります。

特に、個人情報、顧客情報、契約情報、売上情報などを扱う場合は、誰が閲覧・編集・出力できるのかを明確にする必要があります。

5. 似たようなツールが重複して増える

部署ごとに個別最適でノーコードツールを使い始めると、同じような機能を持つアプリや管理表が複数生まれることがあります。

たとえば、営業部門、CS部門、管理部門がそれぞれ別の案件管理ツールを作っているような状態です。

一見すると各部門の業務は効率化されていますが、全社で見るとツールが重複し、管理コストやデータ連携の負担が増えてしまいます。

ノーコード活用に必要な“ガバナンス設計”とは

ノーコードツールを安全に活用していくためには、「使わせないためのルール」ではなく、「現場が安心して使い続けるための仕組み」が必要です。

ノーコード活用におけるガバナンス設計とは、誰がツールを作成してよいのか、どの範囲まで現場で対応してよいのか、どのデータを扱ってよいのか、作成後に誰が管理するのかを整理することです。

特に、現場主導でDXを進める場合は、自由度を高めるほど管理の難しさも増していきます。だからといって、すべてを禁止したり、情シスやDX推進部門の承認待ちにしたりすると、現場の改善スピードが落ちてしまいます。

大切なのは、現場に任せることと、現場任せにすることを分けて考えることです。
ノーコードツールのガバナンス設計は、現場の主体性を活かしながら、属人化・重複開発・情報漏えい・運用停止といったリスクを防ぐための土台になります。

ガバナンスは「禁止するルール」ではなく「安全に使うための仕組み」

ノーコードのガバナンスというと、「自由に作らせないための制限」と捉えられがちです。

しかし、本来の目的はノーコード活用を止めることではありません。

重要なのは、現場の改善スピードを活かしながら、企業として安全に運用できる状態をつくることです。

つまり、ガバナンス設計とは、

を整理することです。

ノーコードガバナンス設計で決めるべき5つのポイント

ノーコードツールのガバナンス設計では、最初から細かいルールを作り込みすぎる必要はありません。大切なのは、現場が使いやすい状態を保ちながら、企業として最低限押さえるべき管理項目を明確にすることです。

特に決めておきたいのは、利用できるツール、作成できる範囲、扱ってよいデータ、作成後の管理方法、そして相談・レビューの体制です。

これらが曖昧なままだと、現場ごとに判断基準がバラバラになり、結果としてツールの重複や属人化、情報管理の不備につながりやすくなります。

反対に、基本ルールが整理されていれば、現場は迷わず改善に取り組みやすくなります。
ノーコード活用を止めるのではなく、安全に広げるためにも、まずは次の5つのポイントを押さえておきましょう。

1. 利用できるツールを整理する

まずは、社内で利用してよいノーコードツールを明確にします。

すでに使われているツールを棚卸しし、以下のように分類すると整理しやすくなります。

分類 管理方針
全社利用ツール kintone、Power Platformなど 管理者を設定し、標準ルールを整備
部門利用ツール 部門専用の業務アプリ 利用部門と管理責任者を明確化
個人利用ツール 個人メモ、簡易タスク管理など 業務データの扱いに制限を設ける
利用禁止・要申請ツール 外部共有リスクが高いもの セキュリティ確認後に判断

 

2. 作成できる範囲を決める

ノーコードで作ってよいものと、情シスや専門部門が関与すべきものを分けます。

たとえば、以下のような基準が考えられます。

現場主導で作成しやすいもの 情シス・管理部門の確認が必要なもの
個人・チーム内のタスク管理 個人情報を扱うアプリ
簡易的な申請フォーム 顧客情報・契約情報を扱うアプリ
部門内の進捗管理 基幹システムと連携する仕組み
定型作業の簡易自動化 外部共有・外部連携を含む仕組み

この線引きがないと、現場が良かれと思って作ったものが、企業全体ではリスクになることがあります。

3. データの扱い方を決める

ノーコード活用で特に重要なのが、データ管理です。

こうしたルールをあらかじめ決めておくことで、データ漏えいや情報の重複を防ぎやすくなります。

4. 作成・変更・廃止のフローを決める

ノーコードツールは「作るとき」だけでなく、「変更するとき」「使わなくなったとき」の管理も重要です。

たとえば、以下のような流れを用意しておくとよいでしょう。

この流れがないと、使われていないアプリや自動化フローが残り続け、管理対象だけが増えていきます。

5. 管理者と相談窓口を決める

ノーコード活用を安全に広げるには、現場任せにしすぎないことが大切です。

とはいえ、すべてを情シスが管理しようとすると、今度は情シス側の負担が増えてしまいます。

そのため、以下のような役割分担が有効です。

役割 主な担当
全体管理 情シス・DX推進部門
利用ルール整備 情シス・管理部門・情報セキュリティ部門
現場アプリ作成 業務部門の担当者
運用・改善 現場担当者+DX推進担当
相談・レビュー ノーコード活用支援チーム

 

ノーコード活用を止めないための運用ルール例

ノーコードガバナンスでは、最初から細かすぎるルールを作りすぎると、現場が使いづらくなります。

まずは、以下のようなシンプルなルールから始めるのがおすすめです。

ルール 内容
作成台帳を用意する アプリ名、作成者、利用部門、目的、扱うデータを記録
管理責任者を決める 作成者とは別に、部門内の管理者を設定
個人情報の利用は事前確認 顧客情報・社員情報を扱う場合は申請制にする
外部共有は原則禁止または承認制 URL共有、外部ユーザー招待を管理する
半年に1回棚卸しする 使われていないアプリや重複ツールを整理
命名ルールを統一する アプリ名・フロー名・項目名を見れば用途が分かるようにする

このくらいから始めると、「縛りすぎず、放置もしない」ちょうどよい管理がしやすくなります。

ノーコードガバナンスで大切なのは“現場を責めない”こと

ノーコードツールが乱立している状態を見ると、「勝手に作られて困る」と感じる管理部門もあるかもしれません。
しかし、現場がツールを作る背景には、多くの場合、業務を少しでも良くしたいという前向きな動機があります。

問題は、現場が作ること自体ではありません。
問題なのは、作ったものを安全に運用し、継続的に改善する仕組みがないことです。

そのため、ノーコードガバナンスでは、現場の改善意欲を否定するのではなく、安心して活用できるルールと支援体制を整えることが重要です。

まとめ|ノーコード乱立時代は「作る力」と「管理する力」の両方が必要

ノーコードツールは、現場主導の業務改善を進めるうえで非常に有効な手段です。

一方で、ルールや管理体制がないまま活用が広がると、シャドーIT、データ分散、属人化、セキュリティリスク、重複開発といった問題が起きやすくなります。

これからのノーコード活用では、単に「誰でも作れる」状態を目指すだけでは不十分です。

必要なのは、現場の改善スピードを活かしながら、企業として安全に運用できるガバナンス設計です。

作る人を増やす。
でも、作りっぱなしにしない。
現場に任せる。
でも、現場任せにしない。

このバランスこそが、ノーコード乱立時代のDX推進に求められる考え方です。